贈り物

贈り物

「あの、あの、あのね、道倉さんに聞きたいことがあってん」

「はい。何でしょう?」

「道倉さん、前に、お父さんのあの、あの、何やっけな、あの…」

「お父さんの、ですか?」

「そうそう。お父さんの、あの、ほら実家に帰って、あの、うーんと、あれ、みんなで、したやんか?」

「実家でみんなでした、こと?」

「何やったっけ、あの、あれ、おめでとうのやつ」

「ああ、父の還暦のお祝いのことですか?」

「それそれ。そんときは、お父さんに何かあげた?」

「うちの父は中日ファンなので、野球観戦に招待しました」

「そっか、そうやったなあ。あの、あの、他にはあげた?」

「野球を観た後に、ひつまぶし食べに行きました。それは弟がごちそうしてくれました」

「ああ、そう言っとったなあ。何もあげてへんのやなあ」

「ああ、贈り物としてはあげてないですね。曽根さん、誰かに贈り物したいんですか?」

「そうやねん。姉さんがもうすぐ、その、それやねん」

「お姉さんが還暦ということです?」

「そう、そう、かん、かん、かんれきやねん」

「そうですか。おめでとうございます。それは何か贈りたいですね」

「そやねん。何がええかなあと考えてるんやけど」

「なるほど、曽根さん、ちなみに還暦の贈りものの定番は知ってます?」

「知ってんで。あの、あれや、赤いやつやろ?」

「そうですよね。赤い、何ですか?」

「赤い、あの、何や、こうゆう、チョッキみたいなんやろ?」

「はい。そうです。赤いチャン?」」

「チヤンチヤンコやな。でもなあ、はっきりゆうてな、そ、そん、そんなんは姉さん絶対いらんと思うねん」

「まあ、昔からの風習だけですもんね。無難なところでお花とか?」

「姉さんは、ほらあれや、あれ、あの、花より団子やわ」

「でしたら、お菓子はどうですか?」

「菓子もええねんけどな、何というか、なに、その、当たり前すぎやんか」

「確かに。せっかくだからもっと特別感がほしいですね。曽根さん、お姉さんが今何がほしいか、こっそり探りを入れてみるとか?」

「そんなん、いちばんようせんわ」

「思いつきました!手紙を書くのはどうですか?」

「て、手紙?」

「手紙で気持ちを伝えるんです。お姉さん、あれこれ曽根さんを助けて下さってるじゃないですか、だから、『お姉さん、いつも…」

「ありがとう』って?ああ、それええやん。でも書けるかなあ」

「お手伝いしますよ。一緒に考えましょう」

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