手紙

先生、ご無沙汰しております。
先生に言語のリハビリをしていただいた梶原です。
その節は大変お世話になりました。

退院してもう2年になります。
おかげさまで、身体の方はマヒもほとんどなく、左半身に多少のしびれが出ることがある程度で、生活できています。

2年間いろんなことがありました。

退院して1年たったときに、パートで勤めに出ました。
和菓子の販売です。
お客さんの注文を聞き、和菓子を包装して渡す仕事です。

簡単に聞こえるかもしれませんが、私にはとても難しいことでした。

お客様が1人なら対応できます。
でも、たくさんのお客様がやってきて、次々に注文されると、まるでダメでした。
混乱して頭が真っ白になり、手がぴたっと止まってしまうのです。

先生は私の特徴を「焦りやすいこと」「複数のことを同時にするのが苦手なこと」「集中しすぎると周りが見えなくなること」と言われました。

「一つ一つを確実にし終える」ことが大事だと。

でも、お客さんを目の前にするとできませんでした。

優先順位がつけられず、私が動けないでいると、お客様がイライラするのがわかって、余計にダメでした。

社員さんにはそのうち慣れるよと言われましたが1週間で辞めました。
パートから帰ると疲れて家のことが何もできず、翌日まで寝込んでしまい、家族にも迷惑がかかるし、とても続けられないと思ったからです。

今はパートはあきらめ家にいます。

先生、覚えていますか?

入院中、私が先生に「この病気は治るんですか?」と聞きました。
先生は「梶原さん、病気の治療は一定期間で終わります。でも後遺症である高次脳機能障害は完全には治らないと思って下さい」と言われました。

そのことばの正しさを今になって、実感しています。

でも、先生、あの時、私はとてもショックを受けました。
入院中にリハビリでよくなろうとしていた、よくなる希望をもっていた、あの時には聞きたくなかったことばだったんです。
先生が私のためを思って言って下さったことはわかっています。
あのことばは伝える時期を選ぶべきことばだったと思います、たとえ真実であったとしてもです。

頭の病気をすると疲れやすくなるというのは本当ですね。この手紙を書くのに1週間もかかってしまいました。
乱文乱筆をお許し下さい。

先生のますますのご活躍をお祈りしています。

追伸
次女が昨年出産しました。
私、おばあちゃんになりましたよ。

梶原